我流タイムアタック論

こちらではお久しぶりです。相変わらずXのタイムアタックに取り組んでいますが、そういえばタイムアタックに取り組むときの考え方や姿勢などについての記事を書いたことなかったなぁということで今回記事にしてみました。

※なお私の経験則に基づいて書いた、極めて主観の強い記事なので悪しからず。

目標の設定

タイムの更新に当たって、目標の設定は不可避であるが、私の場合2通りの目標設定方法を採用している。

 

F-ZERO Centralなど参加人数の多いランキングサイトで自分より少し速いタイムを目標にする

②ラップ自己ベストの合計(RTA勢にはSum of Bestと言った方が通じるだろう)から少し遅れた記録を目標にする

 

①の場合、参照するデータが多いので自分の立ち位置を把握しやすく、目指したい記録もわかりやすい。最初のうちは一気に数ランクジャンプアップできるが、上に行くにつれ上げるランクは少しずつにしていく。

②の場合は参照する記録が少ない場合でも使える利点がある。目標の設定の仕方を例に出してみる。

②-1. 今私はF-ZERO XのFire Fieldというコースのタイムアタックをしている。各ラップのベストは順に18秒14、16秒84、15秒86で合計すると50秒84になる。これを(自己)理論値と呼ぶ人も多い。

②-2. 次に走っているコースの性質を考慮し、理論値から少し遅いタイムを目標に設定する。性質というのは、タイムを煮詰めやすいか、逆に大技が多い、完走までが長いせいで煮詰まりにくいかである。今回例に挙げたFire Fieldは大技の使用が多く、マージンを多めにとって目標を設定する。これは経験によって設定の匙加減が身に付いてくると思うが、私だったら51秒台が現実的な所だと思う。
逆に煮詰まりやすいコース、具体例を出すと初代F-ZEROのMUTE CITY Iはシンプルなテクニックしか使わない。したがって走法が同じであればタイムが煮詰まりやすいので、理論値に近い目標値を設定する。

イチローの引退会見から引用するが

あくまでも秤は自分の中にある。それで自分なりに、その秤を使いながら、自分の限界を見ながら、ちょっと超えていく。ということを繰り返していく。そうするといつの日かこんな自分になっているんだっていう状態になって。だから少しずつの積み重ねが、それでしか自分を超えていけないと思っているんですよね。一気に高みにいこうとすると、今の自分の状態とギャップがありすぎて、それを続けられないと僕は考えているので。地道に進むしかない。進むだけではないですね、後退もしながら。ある時は後退しかしない時期もあると思うので。でも自分がやると決めたことを信じてやっていく。でも、それは正解とは限らないですよね。間違ったことを続けてしまっていることもあるんですけれども。でもそうやって遠回りをすることでしか、本当の自分に出会えない

いきなり高い目標を持つのではなく、ちょっと上の記録を目標にするのは①も②も共通している(イチローの引退会見でこの言葉を聞いたとき、彼ほどの実績の人間でもこのような考えなのかと衝撃を受けた覚え)。

余談であるが、私の好きなF-ZERO XやGXは、特定以上の速度に達することで更なるショートカットや加速技を仕掛けてタイム短縮を図れるケースが多く(逆に言うと遅い速度しか出せないなら遅いまま)、タイムの短縮量が足し算ではなく掛け算のように増えていく性質がある(これをチェイン・リアクションと呼ぶ)。また先日Switchオンライン追加パックでリリースされたF-ZERO for GBAもマシンの速度下降が緩いマシンがあり、高速域を維持する技術次第で大きくタイム削減を狙えることもある。

自己ベストは自分の限界に挑んだ結果ではない

よくタイムアタックは「自分の限界への挑戦」などど喧伝されているが、私個人の考えをいうとこれは正しくないと思う。

諸説あるらしいのだが、人間の継続できる集中時間は15分、大人が継続できる集中時間は平均50分、最大でも90分とも言われているが、これを超える時間のRTAや練習、やり込みに取り組んでいる人、配信でよく見ますよね?

またスポーツでもよく言われることだが、身体能力だけに頼った人間はすぐに成長が止まる。

では自己ベストは何の結果出た産物かと言うと、しっかりした基礎の上にプレイングの引き出しの増加と再現性の向上が重なった結果と考えている。

基礎の重要性

どんなに大技を決めたとしても、また乱数要素の強いゲームで強運を引いたとしても、最後まで持って帰らなければ結果として残らない。そもそも大技だったらキャラの動きやゲームの仕様を理解して初めて使いこなせる技等も少なくないし、決めたとしてもいつもは当たり前のように駆け抜けている場所で躓いて大ロスないしやり直しにしてしまったら台無しである(私はこれを「下らないミス」と呼んでいる)。そこで大技・強運で得られたタイムを活かすにはこういった「下らないミス」を減らすために基礎が大事になってくる。言い換えるなら、基礎という地盤の上に大技・強運を乗せるのである(特にF-ZEROタイムアタック関係では何度も言ってる)。

引き出しの拡充

スタートからゴールまでのプレイ方法が自分の中で一通りしかない場合、少しでもミスしたらやり直し確定だし更新の将来性も望めない。

そこでプレイングの選択肢を増やす。ここで言う選択肢とは、更新に繋がるものもあれば、上手くいかなかったところのロスを小さく留めるものもある。

私のやっているF-ZERO XやGXでいうと、マシン選択、ブースト配分、コースの場所で使用する基礎・応用テクニックの選択肢が該当する。また単純な技の取捨選択だけでなく、速度次第で走法が分岐する場所で上手くいった・いかなかった場合はそれぞれどのような方法をとっていくのか、これをマシンを走らせながら考える。

ではどのようにしてプレイングの選択肢を増やすのか?プレイを重ねて経験を積むのは誰もが思いつくことだと思う。あとは自分の中のプレイ動画のライブラリーを増やすことが重要である。

世界記録の動画だけでなく、ランク上位者~中堅者、通常プレイの上級者など、自分のレベルにあって参考になりそうな動画をチャンネル登録や再生リスト登録でまとめる。RTAの場合、今の時代はSpeedrun.comができ、そこではランキング登録者ほとんどの動画を見られるので探しやすさという意味ではいい時代になったと思う(逆にメジャーになりすぎて誰もがこれを持ち出すのも良くないと思っているが、それはまた別の機会にでも)。またゲームプレイスキル以外に、簡単な英文法を理解できる程度に英語は勉強しておくと良い。日本人プレイヤーや日本語の資料が充実しているゲームなら英語は必要ないが、そうでないゲームならほぼ必須である(ある程度大学までに英語に触れておいてありがとう過去の自分)。

 

それと自分のプレイの見直し、自分より上位者との違いを見比べることも重要。前者はいいイメージを残すことと反省を兼ねている。

後者に関してはSector Betaのタイムアタックを例にあげよう。

私の1分2秒台の動画

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WMJ氏による1分1秒台の動画

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Daniel氏による世界記録の動画

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今特にチェックしているのは2点。まず1周目最初のジャンプのACIDTDをドリフトで入るかサイドアタックターンで入るか。方法の違いにより、1周目のタイムがどれだけ違うか。

2点目はコース終盤にある逆ループ終了後のDTDに入るとき、ドリフト開始地点はどのあたりか。またその違いにより、DTDの最大速度にどのくらいの差が出るか。

このあたりの違いを見比べるなどをしている。

再現性の向上

再現性の向上には①サイクル化と②操作感覚の言語化の2つの方法があると思っている。

①サイクル化

特にレースゲームのタイムアタックに言えることだが、コースを複数周するので難易度の高い技の操作方法はサイクル化していく。Space Plantを例に説明する。

動画

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このコースの序盤のトンネルを抜けた後、一定以上の速度でイン側が隆起しているカーブの壁に、スティックを斜め左下に入れながらサイドアタックしマシンをぶつけると浮上することが出来るポイントがある。更に機首を上げて体勢を整えるとDTDを仕掛けられ、大きなタイム短縮を狙える。

このテクニックは速度が必要なだけでなく、最初のDTD後の壁接触を少なくしてエネルギーを多めに保つ必要がある。それだけでも難易度が高いのだが着地先はきつい右カーブのシリンダーになっており、着地後の操作は更に難易度が高い。これを3周分行わなければいけないのだが2,3周目も1周目と同じDTD操作をすることで操作の定着と成功率の向上を図っている。このように非常に難易度の高い場所をサイクル化することで完走率を向上させ、その先にあるタイムの更新を狙っているということだ。

 

②操作感覚の言語化

よくRTA解説動画で見られる、バグ技や大技の発生メカニズム・操作手順はもちろん、キャラ選択や基本的な操作といったゲームの基礎部分に関しても自分なりの意図や感覚も言語化できるようにする。前者に関しては今の時代RTAの解説動画がかなりあるのでイメージできる方が多いと思う。

しかし後者については出来ない方も多いと思うので私のやっているF-ZERO Xを例に説明する。マシンの操作感の好みのほか、基本的なカーブのアプローチに関してコースのどのエリア(アウト、ミドル、イン)から仕掛けてどのラインを通るのか・サイドアタックは何回仕掛けてターンするか・ドリフトの場合はどのくらいまで速度を伸ばせれば理想的か、そしてこれらのコーナリング時のスティックの操作感覚はどのようなものか。これらを自分なりに言葉に出して説明する。あくまで自分のなかの感覚なので他のプレイヤーと一致はしなくて良いが、自分の中で確立する必要はある。解説動画の作成は、こういった説明の良い練習となる。

但し、やりすぎてはいけないことがある。それは先駆者の解説動画やチュートリアル動画の妄信である。

初めのうちはそれでいいが、記録が頭打ちになってきた時さえそれらをアテにしているとゲーム自体の理解が進まず、自分なりの工夫が生まれないし打開が出来ない。こういうことを言うと反感を買うだろうが、これらを妄信してゲームをやるのは攻略情報を見ながらゲームをやるのと本質的に変わらない。理由やゲームの仕様を知らず書かれた通りにやるのとどちらも同じだと思っている。挙動の仕様や動き・ルート選択の理由の理解を自分なり進めることで新たな発見もあるだろう。

 

私の場合このような考えでゲームをやり込んでいますよという感じの記事だが、いかがだっただろうか。やり込んでいるゲームが少ないためかなり偏った記事に仕上がったとは思うが、読者諸君の参考になれば幸いである。